突然、娘に「へその緒が見たい」と言われた。
たまに読み進めている産婦人科マンガの影響らしい。
その時は忙しかったし疲れていたし面倒だったので、「また探しておく」と返事をする。
頭の片隅で「どこに仕舞ったっけな」何となく考え始め、二時間後くらいに「たぶんあそこだ」と思い出す。
翌日、娘に急かされて重い腰を上げる。
ここにもないそこにもない、このへんにあるはずなのにおかしいぞ、まさか間違って捨ててやしないだろうな、とクローゼットの中を探し続け、見つけ出すまでに十五分。
何で今こんなことをせにゃならんのだ。放っておけばそのうちひょっこり見つかりそうなものを。探しているとき限って出てこないのだ。とだんだんイライラしながらも、最終的には無事が確認できてやれやれだった。
結局、最初に思いついた場所の近くにあった。いつの間にか幾重にも箱に包まれ、マトリョーシカみたいになっている。なくさないよう気をつけているうちにこうなったのであろう。
娘を呼んで見せると、だいたい想像通りだったようで、納得しながら去って行った。
娘のへその緒だから一応保管しているが、そこらへんは伝統と文化による刷り込みが多分にある。もし母がいなくなって自分のへその緒が発掘されても、まずいらないと思う。後世が困るだろうし。
元あったように仕舞っておく。次はさすがにすぐ思い出せるだろうというのは、甘い考えかもしれない。しかし、違う仕舞い方をしても探し出せる自信がない。