斎藤美奈子さんの新刊が発売されていたことに気付き、本屋に行くのも、ましてや図書館で借りるのも待ちきれず、Kindle版をポチってしまった。
すぐにでも読みたいと思わずにはいられない、私にとっては数少ない文筆家である。とにかく読んでいて楽しい。すごい文章を読み返したい。腑に落ちる、目から鱗、新たな発見の連続だ。
新刊のタイトルは『出世と恋愛 近代文学で読む男と女』。著者いわく「大人になってから読んだほうが、じつはおもしろい」近代の青春小説と恋愛小説について、あいかわらず切れの良い、辛辣なツッコミを見せてくれる。
共通パターンからの考察と、時代背景に迫った解説には、「そういうことか」と納得することしかりだった。
青春小説の王道は「告白できない男たち」
- 主人公は地方から上京してきた青年である。
- 彼は都会的な女性に魅了される。
- しかし彼は何もできずに、結局ふられる。
夏目漱石『三四郎』、森鴎外『青年』など六作品が取り上げられている。
恋愛小説の王道は「死に急ぐ女たち」
- 主人公には相思相愛の人がいる。
- しかし二人の仲は何らかの理由でこじれる。
- そして、彼女は若くして死ぬ。
こちらは、尾崎紅葉『金色夜叉』、伊藤佐千夫『野菊の墓』をはじめとした六作品。
「こんな態度じゃ逃げられて当然だわい」と思いながらも、うじうじと思い悩む精神風土を自分の中にも見つけたりする。面白くないと思っていた作品の面白さを教えてくれる、とても面白い本だった。