あかねの日記

惰性で続けるブログ

読書『日本のフェミニズム:150年の人と思想』

一週間で読んだ本の中のうち、比較的真面目に取り組んだものについて所感を残しておこうと思う。

本来なら、「読んだ」と紹介する本は証拠写真を載せる方が好ましいのかもしれない。ブログを始めたころは寝たきりだったため、メモ&参考としてAmazonリンクを貼り付けていた。それを惰性で続けている。今後は余裕があれば画像も貼ろうと思う。一方で著作権も気になるので、著作元に損害を与えないよう個人利用の範囲内で気を付けたい。

今週読んだ本と参考文献

真面目に読んだ本は、写真右の井上輝子『日本のフェミニズム:150年の人と思想』。

最近読んだシモーヌ・ド・ボーヴォワール第二の性』はフランス、バージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』はイギリスの歴史・文化を背景としていた。日本におけるフェミニズムの本も場当たり的に読んできたが、ここらでもう一度整理しておきたいと思った。

この本はフェミニズムの特定思想や主義主張の本ではなく、歴史の経過を分かりやすくかつ具体性も失わずに記している。本当なら、明治から現代までを四つの時代に分け、それぞれを八つの論点で整理したものになるはずだった(表と目次は下の写真で拝借)。しかし著者が逝去されたため、第Ⅱ期までしか残されていない。それがこの本の前半Part.1である。後半Part.2は、過去のエッセイから構成されている。

本来書かれるはずだった、年代(横軸)と論点(縦軸)

幻の目次

流れが分かりやすく、今まで聞いたことがなかった人を多く知れた。予定されていた後半が読めないのは残念でならない。こういった本で時代を通して背景を把握しておくと、個々人の主張を読むときにとても頭に入ってきやすいと思う。

第Ⅰ期(明治~第二次世界大戦終了)までで面白かったのは、明治・大正の論壇。平塚らいてう山川菊栄伊藤野枝、その他論客がバッチバチの論争を繰り広げている。学校の歴史の授業で習ったときは固そうな印象しかなかったのに、こうして読んでみると各人の思いで革新的な活動を先導したのだと分かる。そして私生活では大変な苦労をしており、家庭との両立は肉体的にも精神的にもつらかったことが覗える。その後の時代は、戦時中の重苦しい雰囲気が漂っている。

第Ⅱ期(戦後~高度経済成長期)は、法律関連の話が主だった。市川房江も固いイメージしかなかったが、地道で粘り強い活動をされていたのだと知った。この本ではフェミニズムの面から見ているので、政治活動とか労働組合とか功罪を自分では判断しかねるところもある。しかし、法案を提出するも意図しない修正が加えられ、それが何十年もそのままになっているのはもどかしく感じた。高度成長期における理想の家庭像の成り立ちを見ると、メディアでのプロパガンダや、トップダウンのスローガンに惑わされたくないなと思う。

過去に読んだ書籍(小室直樹副島隆彦佐藤優など)の影響で属国論や陰謀論が頭の片隅に残っているが、個人の思いや生活に根ざした活動はそれらとまた違っており、自分の目の前のことをこなしつつ諦めず地道に生きていくしかないなと思った。

 

上野千鶴子さんについては、蛇足になるが二点ほど。一点、ご自身の反論では「家族主義の日本の法律を逆手にとる」とあるが、事実婚を選びたくても現状の婚姻制度に入った方が圧倒的に便利なのでそうしている人も多いのではないかと思う。自分たちだけがうまく利用してやったという表現が気になっている。二点、制度を利用するのなら「結婚しているフェミニストは好きじゃない」とい分断するようは発言はどうかと思っている。

とはいえ、上野千鶴子さんの人格や業績を否定するつもりは全く無い。強気に発言しなければ生き残れなかったというご事情や、活動を続ける中での大きなしがらみもおありだろうと考える。ご自身の主張のうち後から誤りだと考え直したものは、後続の著書で訂正しているのも見たことがある(どの本かすぐに出てこない)。

今では大家となり、ここ十年くらいは人生論の本も多く出版されているが、まだ若手と呼ばれていたころに執筆された勢いと才気があふれる本はやはり読んでて面白い。(下の二冊は Kindle Unlimited でも読めるようになっている…)